Day 11 Speculation
粉塵に覆われた空の陽が沈む。ぼんやりと明るい世界はほどなくして闇に包まれる。
今日も甲板の哨戒シフトが終わった。
機体をハンガーまで戻し、ぽつぽつと食堂へ流れていく人の流れを見送る。
ガレージの隅に置いてある、予備機となっているジズの元へ向かう。
保守のためには毎日来る必要もないのだが、ここ数日は他に目的があった。
7月8日にこの機体に一体何が起こり、被撃墜という結果になったのか。
原因は何か?今の乗機でもそれが発生する可能性はあるのか?
今までも気になってはいたものの、本腰を入れて調べる時間が無かったのだ。
つい先日南方方面で真紅連理からフレームを受領した別動隊が合流した。
そのため比較的シフトにも余裕ができたというわけだ。
本日のニュースです
バイオ研究所は新しき理論を提唱し
バイオ兵器と人間の融合が可能である論文を発表しました
ヴォイド・エレベータから得た知識をもとに
バイオ臓器移植技術を発展させ、バイオ生命体へと融合するということです
希望がある限り……私たちは、生き残れるのです
ラジオを背景に流しつつ、詳細な当時のログを目視で確認する。
「……突然メインシステムが落ちたみてえだな。無線を聞く限り他の機体も似た状況だ」
戦後、グレムリン技術を牛耳っていたのはTsCだ。
あの日まで稼働していたグレムリンは多かれ少なかれどこかにTsCの技術が使われている。
そしてあの日の未明、TsCが壊滅。グレムリン技術の管理を目的としていたのなら、
本拠地が落ちたら停止するシステムでも仕込んでいたのだろうか。
「だが、あの後動くグレムリンもある。てことは、TsCのプログラムが悪さをしてるってことか……?」
このグレムリンは純正のTsC製グレムリンではない。しかし、戦後に傭兵として仕事をするにあたり、
いくつもプラグインを入れてカスタムしていた。言うまでもなく、その中にTsC製の物もある。
「TsC製のプログラムを抜けば、再起動するのか……?」
おびただしい量の文字の並ぶパネルを睨みつつ、そんなことを呟く。
都合の良すぎる話だし、手間も時間もだいぶ掛かる。
その思案は、突然のサイレンに遮られる。
『――緊急警報。周辺海域に未識別機動体を確認、数30機以上。各員、戦闘配置へついてください。繰り返します、緊急警報――』
「ザミエル、いつでも出られる。ジズはすぐ出せるか?」
海が荒れ始めているのか、床がぐらりと揺れた。
本日のニュースです
ジャンク財団の攻勢は日々激しさを増しています
彼らはコンテナを抱える傭兵や集落に執拗な攻撃を行います
多くの街が焼かれ、物資が奪われています
戦火の傷跡は大きく、我々はいま試されています